puttinpuddinのブログ

コンサルタント見習いの仕掛かり作業

「本棚」で殴る

それなりに順調にいけば、2-3年目あたりで週次定例レベルの「仮説」を立てることが求められるようになる。「仮説」とは、慣習的に「論点に対するその時点での仮の答え」を意味しており、仮説を立てるという営みにはその意味するところからも明らかなように即時性が求められる。

 

で、(最初は誰だってそうなのだが)仮説が立てられないジュニアは「考え抜けていなかった」「次は考え抜く」みたいな反省をしがち(つい先日も一件あった)なのだが、これはあまり有効な反省ではないように思っている。

 

「考え抜く」が具体的に何を指すのかはよくわからないが、語感から推察するに、「思考を途中で止めず、正しい答えに至るまで継続すること」くらいの意味だと思われる。つまるところ、上記の反省は、上手くいかなかった原因を有効な処理数の不足に見出しており、次回はこれを解消しようと決意を新たにしている。

 

処理数を増やす最も簡単な方法は、投下時間を増やすことだが、そもそもの目的が仮説を立てることである以上、時間をかけていては意味がない。となると、残る選択肢は処理速度の向上になるが、短期間で処理速度を向上できるとしたら心身の健康状態の回復くらいしかなく、いずれも健康な場合、残念ながら(それはそれで素晴らしいことだが)そこからの向上は通常ほとんど望めない。

 

結局のところ、事前にたくさん考え、それを動員し易く整理しておくことで、仮説を立てるその瞬間に新たな求められる処理数を減らすしかない。経営理論や経済性に関する先行研究や組織の動かし方の定石を収集し体系化し使えるように反芻する努力の方が、処理速度を上げようとする努力より、仮説を立てられるようになるうえでは有効だと思っている。

 

新卒採用に関わっていると、コンサルティングサービスの価値の源泉を瞬発力的な意味での地頭の良さと捉えてる人が多い印象を受ける。たしかにそれもある程度は必要だが、どちらかと言うと足切り条件でしかなく、提供価値に対しては、当該テーマと関連薄そうなことも含めた「事前に考えた量」の方が寄与度が高い。とりわけ、仮説を立てるという営みにおいては、事前に築いた「本棚」から文脈への適合度の高い知識を適切に動員できるかが、パフォーマンスを左右する。