puttinpuddinのブログ

コンサルタント見習いの仕掛かり作業

「適切な問題」の発見

以前の投稿で、「問題解決という営みは、「適切な問題」の発見も射程に入れる必要がある」と書いた。そしてその問題解決を職能として修めるのであれば、問題発見についても形式知化し、可能な限り再現性を高める努力が必要だと考えている。

たしかに「適切な問題」を特定するアルゴリズムを組むのは困難だろう。しかし、最低限満たすべき要件や思考手順というものは、クライアントの置かれている固有文脈とは独立にある程度明文化できる筈である。抽出された任意の「問題」に対して、それが「適切な問題」かの評価の効率と安定性を高めることはできる。

 

1.基本は「最適化」

「問題」は「事実認識」と「価値基準」の照合から導かれ、メカニズムやリソース制約を加味していくことで現実に刈り取れる効果が低減していく。

企業活動は「外部環境に対する内部環境の適応」なので、我々が検討の中で語る「効果」は「最適化余地」と捉え直すことができる。従い、「広義の最適化計算を誤りそうで、且つ、最適化計算を実行できそうなところ」を抽出しようと心がけるべきと考えられ、具体的には、以下のいずれかの外形的特徴を持つ筈であ。

  1. 非線形な構造を持つ
  2. 変数が多い
  3. 変数の変動幅・分散が大きい

 

2.「変化」を掛け合わせる

但し、①-③のいずれも平時であれば基本的には潰し込まれている(少なくとも全体最適にはなっている)場合がほとんどであり、一見最適化余地があるように見えたとしても注意する必要がある。

例えば、相手が職能制組織の長である場合、職能制組織を横断した視点を提供することで最適化を促せる可能性がある。一方で、収益責任を負う事業部長クラスになると、市場と自社組織との適合、及び、職能性組織間の最適化については現有の体制を前提とすると既に追求しきっている場合が多い。

故に、「平時」の裏返しとして、「PESTのいずれかで、大きな変化が生じていること」を追加の条件とすべきと考えられる。

例えば、「スマホが普及したことで購買行動をユーザー個々人に最適化できるようになった」、「コンピューティングリソースが廉価になったことで大規模演算が回せるようになった」、「DXやカーボンニュートラルが共通言語化されたことで当該テーマでの資金調達/予算獲得が容易になった」、等が挙げられる。

「何故既に為されていないのか?」に対する答えが「怠惰だから」「考えが足りないから」を言い換えた表現になっていないかを自分に問うてみると良い。もしそのいずれかになってしまっている場合、一見可能性が大きそうに見えても、掘り進めていくうちに効果の低減率は確実に大きくなる。

 

3.条件を充足するよう「系」を拡げる

上記のような「最適化の難易度」と「変化の有無」の二つの観点で、最適化余地を探索することになるが、探索対象となる「系」の中に両者を満たすものが見出せない場合、「系」を拡げることが必要になる。ここでいう「系」は「①ドメイン」と「②時間軸」から成り、それぞれを変数と見做して操作し、最適化余地を考える。

ドメインを拡げる;
たとえば、ある製造販売事業の提供価値の定義が問題となったときに、「製造販売だけではなくてデータを用いたソリューション提案、更には顧客のビジネスプロセスの取り込む」などのように問題を再定義することが当たる。ただし、範囲の経済性が高い水準で見込まれる/拡げた先で先行者に優る論理が説明できるかを問わねばならない。

②時間軸を拡げる;
今この時点ではどうしようもなくても、時間軸を伸ばせば、何らかの投資とそこからの効果の刈り取りを期待することができる。但し、長期を見据えたデカくて正しい投資には、取締役会の意思決定能力が高く保たれているなど、いくつかの条件を満たす必要があり、そこまで考慮しないと絵空事になる。また、市場の単位で見れば長期的に収斂する方向性(トレンド)に関して見解の相違が生じることは殆どなく、トレンドを認識した上でどのようにその追求を実現するかが実質的な論点になるため、トレンドの提示だけで勝負しようとすると痛い目を見る。

 

4.それでもどうしようもなかったら、、、

以上のようにジタバタ足掻いてみても取り組むに値する最適化余地に仕立てられない場合、前提している制約条件を取り払う(「価値基準」もしくは「リソース制約」を改める)か、さもなくばそもそも問題解決の対象自体を変える(「事実」を改める)ことになる。

このように書くと残念なことのように思えるが、以上のプロセスを即座に実施し、そこから次に取るべき行動を導出することができれば、本来時間を割くべき「適切な問題」に正しく時間を割ける確率は上がると思っている。