puttinpuddinのブログ

コンサルタント見習いの仕掛かり作業

経済合理性と倫理

ソフトウェアエンジニアリング業界で生まれた組織運営のプラクティスは、一定の条件を満たす組織において、道徳の実践が経済合理的でもあるということを立証した。これ自体は素晴らしいことであり、技術の進化とそれに伴う競争が加速する一方の資本主義社会において、従来外部化されがちであった道徳が少なくとも形の上での実践において内部化されたという意味で、エポックメイキングだとさえ言えると思っている。

 

しかしながら、道徳の追求を経済合理性の下で正当化することには、極めてグロテスクな論理的帰結が伴う。経済合理性の追求を最上位に据えても一見成立する体系化に慣れてしまうと、一度それが崩れたとき、もしくは、それが両立しえない範囲に対して、我々は倫理を容易く放棄することになる。あくまで倫理が先行して存在し、それを具体的な実践に落とし込むに際して、従来直面していた「経済合理性への逆行」という阻害要因が取り払われた、という図式を堅持しなければならない。

 

多様性や個人の尊重という重要な概念を取り巻く昨今のナラティブに、多大な不安を覚えている。