puttinpuddinのブログ

コンサルタント見習いの仕掛かり作業

Integratorの仕事

事例を調べてもそこから抽象化したモデルを作れず、事例をそのまま提示することしかできない人がそこそこの割合でいる。事例をどれだけ積み上げても固有文脈を踏まえた提言にならないので、integratorとして機能しているとは言えず、単なる調査のオペレーション代行をしていることになる。

 

経営コンサルティングにおけるintegratorの仕事は、大雑把に記述すると、①具体的な事象の観察から一般的な法則をabductionで導き、②その妥当性をinductionで示し、③固有文脈を前提条件として与えた上でdeductionで結論を導く、という3つのステップから構成される。ベーコンやパースではないが、科学の科学たる所以は①と②にあり、科学的な環境理解と意思決定のためには、効率を優先して事象の観察と法則の導出を怠ってはならない。

 

悲しいことに、最近は働き方改革で短期的な効率を求めた結果、①②を省略する傾向がある。とりわけジュニアが関与することは非効率と(本人からも組織からも)見做されて忌避される傾向があり、僕はそれが冒頭の問題をもたらしているのでは、と思っている。

 

目先の効率重視に振り切ったときにそうなるのは理解できるものの、時間軸を少し伸ばした場合は①~③全ての習熟を優先した方が合理的だと思う。一連のプロセスを素早く精度高く実行できるようになると、初見の情報であっても安定して付加価値が出せるようになり、結果、クライアントやテーマやチームといった環境条件に左右されにくくなって、仕事がだいぶラクになる。

 

ただし、プロセスの成熟にかまけてabductionを受け身で実施するようになるとoverfittingでクソのような法則を導くので、知覚と感性を動員して主体的な情報取得に努めること、abductionの結果をクロスチェックするために累積思考量を追求すること、の重要性は、強調してもし過ぎることはない。