puttinpuddinのブログ

コンサルタント見習いの仕掛かり作業

シニアへのフィードバック

経営コンサルティングの仕事において、ジュニアからシニアへのフィードバックはプロジェクトの成功と個人の成長にとって重要な活動であり、広く実施が促されるべきだと思っている。

 

まず、テーラーメイドで個別解を作りこむという仕事の性質上、すべての検討は程度の差はあれ一品モノ生産であり、これまでに通用したやり方をそのまま踏襲するだけでは価値は最大化できない。大なり小なり必ず修正が伴い、その修正は職位や年次の高低を問わず、すべてのレベルで発生し得る。プロジェクトの責任者にあたるシニアが全てを見渡して自発的に修正できれば理想なのだろうが、現場レベルの情報を取得・処理するのが難しいことを考えると、現実的にはジュニアからのフィードバックもなければならない。

 

また、この仕事はクライアントからかなり高額なフィーをいただいているが、そうしたフィーの高さを正当化するのは、解決する問題の難しさであり、裏を返すと、問題解決能力の希少性にある。問題解決能力の希少性に対して対価を頂いているのであれば、そのコンサルティングフィーの中には、間接的ではあっても、自身を高いパフォーマンスに保つことに対する対価が含まれる筈であり、パフォーマンスを高い水準に維持する凡ゆる努力をしなければならない。つまり、パフォーマンス向上を阻害する要因を放置してはならず、もし阻害要因が職位の上の人間による不適切な振る舞いや彼/彼女の技能の不足であるなら、それらは是正しなければならない。

 

更に、いざフィードバックをする立場に置かれれば分かるが、相手に対して何らか提言/批判するとなると、自分の考えが十分妥当なものかよくよく吟味することになる。この過程で、漠然とした不満や違和感が言語化されるため、心身に負荷のかかりやすいこの仕事でもストレスを溜めにくくなる。そして何より、職業倫理や行動規範に照らして自身の考えが妥当かを確認することで、明文化されることが少ない(明文化されていても実感を伴いにくい)職業倫理や行動規範を内面化する格好の機会になる。

 

以上のような理由から、ジュニアからシニアへのフィードバックは広く実践されるべきだと考えているが、いざ実施する立場になると心理的な抵抗が大きいのか、これまで周囲に勧めてもあまり実践されてこなかった。たしかに、誰だって自分の至らぬところに目を向けたくはないし、職位/年次の低い人からフィードバックされるとなれば尚更屈辱的に捉えられることもあるだろう。しかし、プロジェクトを成功に導きたいと思っている人、より成長したいと考えている人には、フィードバックはこれ以上ない助け舟であり、適切な作法で実践されれば、短期的には関係にぎこちなさが生じたとしても、中長期的には強い信頼関係を築くことに繋がる。今後、広く実践されるようになることを願っている。